
相続の現場でー 家じまいアドバイザー 屋宜明彦氏インタビュー
高齢化が進み、相続業界は巨大市場に成長しました。それに伴い相続業務に関わる士業も激増し、競争は苛烈を極めています。競合他社より抜きん出るためには、士業の本筋業務だけでなく、クライアントのニーズを幅広くカバーできるよう他業種との連携を取ることも重要です。
相続というシーンでクライアントが意外に困っているのが被相続人の遺品整理です。今回は、遺品整理や生前整理、家じまいなどを中心に事業を展開している一般社団法人 心結 代表理事・株式会社スリーマインド 代表取締役の屋宜 明彦様に、実際の遺品整理の現場や信頼できる士業像、さらには屋宜様がどのような理念で遺品整理業務に関わられているかなどをインタビューしました。
―遺品整理業を長くされていらっしゃいますが、市場のニーズはいかがですか?
屋宜:私は全体は見えていませんが、業者は有象無象です。僕がやり始めた3年半の間でも爆発的に増えました。ただ、生き残っているところがどれくらいあるかというと、そこまで多くない。できては潰れ、できては潰れというスパイラルがものすごく早いんです。うまくいかないのは、単純に仕事が取れないからです。
―屋宜さんはどのように仕事を集めているのですか?
屋宜:僕は法人営業です。年間通して9割9分は紹介です。例えば、ぼくがアプローチするのは葬儀・不動産・介護・士業・保険の5業種です。
決裁者に会うまでそれなりに時間がかかりますが、決裁者に会って契約を取れたとしても、この状態では仕事ができません。契約する会社の従業員に落とし込まなければならないんです。
そこに落とし込むための戦略を僕は「キックオフ」と呼びますが、キックオフするために従業員に勉強会をさせてもらったり、「そんな時間は作れない」というのなら朝礼で名刺交換をさせてもらったり。そういう泥臭いことをたくさんします。
このやり方は保険屋に教わりました。いろんな人に営業スタイルを教えてもらいましたね。
―かなり地道なことをされているんですね。この5業種で、割合的にはどこが多いのでしょうか。
屋宜:不動産と葬儀はウエイトを占めていますし、士業マターもうまくいっています。保険は、FPの資格を持っている人の継続研修の講師がメインです。講師料もいただいて営業もできて、なおかつ名刺も集まる。この辺りが僕の戦略です。
なぜこういうことをしているかというと、紹介をもらったお客さんに仕事を返せることって、まずないんです。なぜかというと、うちが最後の最後だから。遺品整理の段階になると、不動産の売却も終わっているんです。そうなると、返せないのに仕事をくださいと言わなければならなくなります。
そこで、セミナー講師に特化しました。セミナー講師になると立場が逆転するんです。「教えて」といわれる立場になる。こうなったら、ある意味私の方が立場が良くなります。その代わり圧倒的に勉強していますけどね。士業にも敵うくらい相続や信託の勉強をしていますから。ただの遺品整理屋ではないくらい勉強はしています。
―遺品整理業は、基本的に即リピートはない世界だと思います。
屋宜:毎月0からスタートしています。ただ、B to Bでやることによってある程度分析できるんです。例えば「A葬儀屋から月2件もらえる」「C司法書士から月1件もらえる」というような目算が立ちます。
あとは、A葬儀社の成功事例をB葬儀社にもっていく。このモデルをずっと検証してやっていくとマーケットが作れます。
―業務だけではなく、経営の勉強もされているのでしょうか?
屋宜:ものすごく勉強します。経営も営業も。特に経営者だと、誰も何も注意してくれなくなりますから、時々自分で自分に負荷を与えないとダメです。叱ってくれる人もとても大事にしています。
―学習する教材としては、ネットの情報や書籍、セミナーなどが多いと思います。それ以外の情報源としては何を大事にされていますか?
屋宜:僕は実務家なので、知識と経験です。ただ、みんな経験を積めるほどのアクションを起こしているかというとそうでもない。実務をもっと増やした方がいいですね。泥臭いことをした方がいいと思います。実際にしてみると「こういうことなのか」と分かりますが、いくら僕がパワーポイントで説明しようが動画で説明しようが、経験していないとなかなか理解はできません。
相続業務も、一回でもちゃんとサポートして成功してちゃんと報酬をもらうということをやってみたら、おそらく一気に経験値が上がると思います。
事例はやっぱり大事で、ケースを山ほど積み上げていくことはすごく大事だと思います。だって、登記しかやったことがない司法書士が相続の仕事は取れないと思いますよ。「相続できます」とホームページに書いてあっても、相続の仕事が入ってきたらどうしようと思うでしょう。
屋宜 明彦様 プロフィール
一般社団法人 心結 代表理事
株式会社スリーマインド 代表取締役
家じまいアドバイザー
一般社団法人心結(しんゆう)を2016年8月に設立。遺品整理や生前整理の現場を6年経験し、2000件以上のお客様をサポート。自分の経験を元に、もっとお役に立ちたいと想い独立。現在は、おかたづけ事業を中心とし、高齢者サポート分野で新たな付加価値を創造するべく事業展開を進める。東洋経済オンラインなど、マスコミ取材も多数。
■本編では、このような内容についてお話いただきました。
―どのような営業戦略で、社団法人と株式会社を2つ立ち上げられたのでしょうか?
―遺品整理業の市場のニーズはどのようなものでしょうか。
―屋宜さんは、どのように仕事を集めていますか?
―遺族を騙す会社というのは、どのような手口で騙すのですか?
―セミナー講師として、セミナーテーマはどのように考えていますか?
―士業はどのようなイメージですか?また、信頼して頼める士業はどんな人ですか?
―士業は知識が足りていないと感じますか?
―今後も遺品関連の仕事は増えていくのでしょうか。
―士業が遺品整理業者とつながることのメリットを教えてください。
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